安全性の高い薬剤の一つ考える。
参考
◇エリスロシンを妊娠第1三半期に服用した79例、妊娠中、時期に関係なく服用した230例の調査では、奇形と薬剤との因果関係は認められなかった。※1
◇妊娠第1三半期に使用した薬物と先天奇形に関する調査が報告されている。報告の著者らは先天奇形の発生率が2倍増加するような薬物はみられなかったと報告されている。妊娠第1三半期にエリスロマイシンを使用した260例の妊婦のうち6例に先天性奇形が認められた報告されている。※2
◇妊娠中のエリスロマイシンによるクラミジア治療の効果と児への影響を検討した調査が報告されている。エリスロマイシンによりクラミジアが陰性化した244例の出産結果を、エリスロマイシン治療後もクラミジア陽性であった79例、あるいはクラミジアに感染していない244例(エリスロマイシン無治療群)の出産結果と比較している。
本報告では、エリスロマイシンによりクラミジア治療が成功した群では、治療後もクラミジアが陽性であった群より早産、切迫早産、出産時低体重が有意に少なかったと報告している。一方、エリスロマイシンによる治療成功群とクラミジアに感染していない無治療群との比較では、早産、切迫早産、出産時低体重に関して有意な差はみられなかったと報告している。※3
◇Rosa Fの1985~1922年の私的調査では、6,972例の新生児が妊娠第1三半期に本剤に暴露されていたが、先天性大奇形は、320例(4,6%)(予想値297例)にみられた。この数字は本剤と先天奇形の関連を裏付けるものではない、また奇形の多様さからも発現奇形と本剤との因果関係は否定的と結論している。※4
◇ハンガリーの先天奇形ケースコントロール調査では、エリスロマイシンの催奇形性について検討した報告がある。奇形のない児を出産した母親38,151例のうち172例(0.5%)は妊娠中いずれかの時期にエリスロマイシンを服用していた。一方、先天奇形をもつ児を出産した母親22,865例のうちエリスロマイシンを服用していたのは113例(0.5%)で、OR:1.1, 95%CI:0.9-1.4であった。本調査ではエリスロマシンの服用に催奇形性のリスクは示唆されなかったと報告されている。※5
◇2003年のスウェーデンのケースコントロール研究では、妊娠中の母親の薬剤使用とその児の心奇形との関連を検討している。心奇形のある児を出産した母親(n=5,015)と健常児を出産した母親(n=577,730)のうちエリスロマシンの服用があったのは、心奇形児を出産した母親で27例(0.54%)、健常児を出産した母親で1,588例(0.27%)であった。[OR : 1.91 95%CI : 1.30-2.80]。本報告では、エリスロマシンの他、インスリンやナプロキセンなどの複数の薬物で関連みられているが、薬物の影響の他の検査の問題、原疾患などの交絡因子の関連も考えられ、さらなる調査が必要であると結論している。※6
- じほう 実践 妊娠と薬(第2版)の相談事例の報告がある。
絶対過敏期にエリスロマシンを使用した25例中24例は奇形などない元気な赤ちゃんを産んでいる。1例心室中隔欠損があった。
相対過敏期3例はいずれも奇形のない元気な赤ちゃんを産んでいる。
文献
・マイランEPD合同会社 エリスロシン 添付文書、インタビューフォーム
・※1 Heinonen OP , et al : Birth Defects and Drugs in Pregnancy, Publishing Sciences Group, pp301, 435, 1977
・※2 Jick H, et al : First-trimester drug and congenital disorders. JAMA,246(4) : 343-346, 1981
・※3 Cohen I, et al : Improved pregnancy outcome following successful treatment of chlamydial infection. JAMA,263 : 3160-3163, 1990
・※4 Briggs GG, et al : Drugs in Pregnancy and Lactation ; A Reference Guide to Fetal and Neonatal Risk, Lippincott Williams & Wilkins, p657-659, 2008
・※5 Czezel AE, et al : A population-based case-controlled teratologic study of oral erythromycin treatment during pregnancy. Reprod Toxicol, 13(6) : 531-536, 1999
・※6 Kallen BAJ, et al : Maternal drug use in early pregnancy and infant cardiovascular defect. Reprod Toxicol, 17(3) : 255-261, 2003
・じほう 実践 妊娠と薬(第2版) p900-903
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