糖尿病は、血糖値のコントロールがうまくできなくなる慢性疾患であり、放置するとさまざまな合併症を引き起こすことがあります。特に「糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)」は、腎臓の機能を低下させ、最終的には人工透析が必要になる深刻な病気です。この記事では、糖尿病と腎症の関係、進行の仕組み、症状、予防・対策法について、専門的な情報をわかりやすく解説します。
糖尿病と腎症の関係とは?原因・症状・予防法をわかりやすく解説
糖尿病と腎症の関係とは?
糖尿病性腎症は、糖尿病の三大合併症の一つです。高血糖の状態が続くことで腎臓の血管がダメージを受け、腎機能が徐々に低下していきます。日本において、糖尿病性腎症は透析導入原因の第1位であり、早期発見・早期対策が重要とされています。
腎臓の働きと糖尿病の影響
腎臓は、血液中の老廃物や余分な水分・塩分を尿として排出する臓器です。また、血圧の調整やホルモンの分泌にも関与しています。糖尿病により血糖値が高い状態が続くと、腎臓の糸球体(しきゅうたい)という細い血管の集まりに負担がかかり、フィルター機能が損なわれます。これにより、通常は尿中に漏れないはずのタンパク質が出てしまう「タンパク尿」が現れ、腎症の進行サインとなります。
糖尿病性腎症の進行段階
糖尿病性腎症は、次の5段階に分けて進行していきます。
- 第1期(腎症前期):微量アルブミン尿が出現。自覚症状はなし。
- 第2期(早期腎症期):微量アルブミン尿が持続。腎機能はまだ正常。
- 第3期(顕性腎症期):タンパク尿が明確に出現し、腎機能が低下。
- 第4期(腎不全期):クレアチニン値の上昇や尿毒症の症状が出始める。
- 第5期(透析療法期):腎機能が著しく低下し、透析が必要となる。
糖尿病性腎症の症状
初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。そのため、定期的な尿検査や血液検査が重要です。進行すると以下のような症状が現れることがあります。
- 足のむくみ(浮腫)
- だるさ・疲労感
- 吐き気や食欲不振
- 貧血
- 高血圧
糖尿病性腎症の予防と対策
糖尿病性腎症の予防には、日常生活の中で以下のポイントを心がけることが重要です。
1. 血糖値のコントロール
適切な食事療法・運動療法・薬物療法により、HbA1cを目標値に維持することが腎症の予防につながります。
2. 血圧の管理
高血圧は腎臓にさらなるダメージを与えるため、家庭での血圧測定を習慣にし、必要に応じて降圧薬を使用します。
3. 塩分の制限
塩分を控えることで、血圧の上昇を防ぎ腎臓への負担を軽減できます。1日6g未満が推奨されています。
4. 禁煙
喫煙は血管を傷つけ、腎症の進行を早めるリスクがあるため、禁煙は不可欠です。
5. 定期的な検査
年に1〜2回の尿アルブミン検査や血液検査(eGFRやクレアチニンなど)を受けることで、腎症の早期発見が可能です。
治療法について
糖尿病性腎症の治療は、進行段階に応じて異なります。初期では血糖・血圧のコントロールを中心に行い、腎症の進行を遅らせることが目標です。進行した場合は、以下の治療が検討されます。
- ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)やACE阻害薬の投与
- 食事療法(たんぱく質制限など)
- 慢性腎臓病(CKD)ガイドラインに基づいた治療
- 腎代替療法(透析や腎移植)
日常生活で気をつけたいポイント
腎症の進行を防ぐには、医師や管理栄養士と連携しながら生活習慣を改善することが大切です。また、サプリメントや健康食品の中には、腎臓に負担をかける成分が含まれている場合があるため、使用する前には必ず医師に相談しましょう。
まとめ
糖尿病と腎症には深い関連があり、放置すると透析が必要になる可能性もあります。糖尿病を持つ方は、日頃から血糖や血圧の管理、定期検査を徹底することで、腎症の発症や進行を防ぐことができます。症状がなくても、早期の段階で対策をとることが、将来の健康を守る鍵となります。生活習慣を見直し、医師と連携しながら正しい管理を心がけましょう。
参考文献・引用
- 日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2024.
- 日本腎臓学会. 慢性腎臓病(CKD)診療ガイドライン2023.
- 厚生労働省e-ヘルスネット「糖尿病性腎症」
- 腎臓病総合医療センター. 糖尿病性腎症の診断と治療.

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