ペアローンは、30代共働き世帯にとって住宅購入の選択肢として人気があります。世帯収入を最大限に活かせる一方で、返済中に病気・離婚・キャリア変化などが起きた場合、思わぬリスクが家計を圧迫する可能性があります。本記事では、ペアローンの仕組みから返済計画の立て方、注意すべきリスク、対策法までを分かりやすく解説します。
【ペアローンの返済計画とリスク】30代共働き世帯が知っておきたい安全な住宅ローン戦略
ペアローンとは?仕組みと特徴
ペアローンとは、夫婦それぞれが別々に住宅ローン契約を結び、互いが連帯保証人になる仕組みです。住宅金融支援機構の資料によると、共働き世帯の増加に伴い、ペアローン利用は近年増加傾向にあります(住宅金融支援機構「2023年度 民間住宅ローン利用者調査」)。
主な特徴は以下のとおりです。
- 夫婦それぞれがローン契約を結ぶため「2本の住宅ローン」が発生する
- 双方に住宅ローン控除が適用される可能性がある
- 借入可能額が増えるため、希望の物件を購入しやすくなる
- 片方が返済不能になると、もう片方に大きな負担が及ぶ
ペアローンのメリット
1. 借入可能額が増える
共働きで双方の収入を合算できるため、単独ローンよりも大きな融資を受けられます。希望のエリアや広さの住宅を選択しやすくなる点が魅力です。
2. 住宅ローン控除を2人分受けられる
住宅ローン控除は、年末残高の最大1%(制度改正により0.7%の年もあり)を所得税・住民税から控除できる制度です。ペアローンなら2人分の枠が使えるため節税効果が期待できます。
3. 所有権を夫婦で分割できる
ペアローンでは、物件の持分割合をそれぞれの借入額に応じて設定するのが一般的です。公平な資産形成につながるメリットがあります。
ペアローンの重大なリスク
1. 離婚時の返済負担が重い
双方が借主、かつ連帯保証人であるため、離婚時にどちらかが抜けることは事実上困難です。住宅金融支援機構も離婚時のトラブル増加を指摘しています。
売却してもローンが残れば、離婚後も返済義務が続くというケースもあります。
2. どちらかが働けなくなると返済困難に陥る危険
病気・ケガ・出産・介護などで片方の収入が減ると、もう一方の負担が急増します。特に30〜40代はキャリアの変化が起こりやすく、無理な借入は大きなリスクになります。
3. 団信は「本人のみ」しかカバーしない
住宅ローンは団体信用生命保険(団信)への加入が一般的ですが、ペアローンでは加入者本人の返済分だけしか保障されません。
例えば夫が死亡した場合、夫のローンは完済されますが、妻のローンは残り続けます。
4. 手続きが多く事務負担が増える
ローン契約が2本になるため、審査・契約書・印紙代・登記費用などが単独ローンより増えます。
30代共働き世帯が取るべき安全な返済計画
1. 世帯年収の「25%以内」に返済比率を設定する
金融庁の家計調査(2023)や多くの金融機関のガイドラインでは、返済負担率は年収の20〜25%以内が安全とされています。
共働きのうち片方の収入が一時的に途絶えても返済可能な水準を目安にすることが重要です。
2. 片方の収入だけで返済可能なシミュレーションを行う
「夫婦で働き続ける前提」だけに頼った返済計画は危険です。
最低でも、以下の条件で返済可能かチェックしましょう。
- 片方が休職した場合
- 育休取得で半年〜1年収入が減る場合
- 転職で年収が一時的に下がる場合
3. 就業不能保険・収入保障保険を活用する
厚生労働省の統計では、長期入院や精神疾患による休職期間が年々増えています。住宅ローン返済のリスクに備えるため、民間の就業不能保険や収入保障保険は有効な手段です。
4. 頭金を増やして借入額を抑える
借入額を下げるほど返済リスクは低下します。特に頭金0円のフルローンは、金利上昇リスクと返済負担の両面から慎重になる必要があります。
ペアローン以外の選択肢
1. 収入合算+単独ローン
夫婦どちらかが主債務者となり、もう一方の収入を合算する方法です。主債務者のみの団信加入で済むため、万一の際の手続きがシンプルになります。
2. 借入額を抑えた単独ローン
単独ローンにすることで、離婚・病気・収入減などのリスクが軽減されます。無理なく返済したい世帯に適した方法です。
3. 持分割合の見直し
物件の持分割合は借入額に応じて設定しますが、将来の変化を踏まえた設定も可能です。
ペアローンを安全に活用するためのチェックリスト
- □ 返済負担率は世帯年収の25%以内か?
- □ 片方の収入ゼロでも1年は返済可能か?
- □ 病気・ケガに備える保険は加入しているか?
- □ 離婚時のリスクを理解しているか?
- □ 手続き・費用が2倍になる点を把握しているか?
まとめ
ペアローンは、共働き世帯にとって住宅購入の可能性を広げる魅力的な選択肢です。しかし、収入減・病気・離婚といった不測の事態が起きると家計への負担が急増するリスクがあります。特に30代〜40代はライフイベントが多い時期のため、慎重な返済計画とリスク対策が欠かせません。
安全にペアローンを活用するためには、片方の収入で返済できるかのチェック、返済負担率の管理、就業不能保険などの補強策が重要です。計画的に準備することで、無理のない住宅購入と安定した家計運営が実現できます。
参考文献
住宅金融支援機構「2023年度 民間住宅ローン利用者の実態調査」
金融庁「家計の金融行動に関する世論調査」
厚生労働省「令和5年 国民生活基礎調査」
国税庁「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の概要」
総務省統計局「労働力調査」
法務省「不動産登記に関するFAQ」

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