クロロゲン酸(Chlorogenic acid)はコーヒー豆やサツマイモに多く含まれるポリフェノールの一種で、抗酸化作用や血糖値上昇抑制作用が知られています。一方、冷え性は末梢血流低下や自律神経の乱れなど複合的要因により生じる症状で、多くの人が改善策を求めています。本記事では、クロロゲン酸と冷え性改善の科学的根拠を、査読済み論文や公的機関のデータをもとに詳しく解説します。
クロロゲン酸と冷え性の関係は?最新研究からわかる作用メカニズムと改善の可能性
クロロゲン酸とは何か
クロロゲン酸(Chlorogenic acid)は、コーヒー豆、サツマイモ、リンゴなどに含まれるポリフェノールで、化学的には「カフェ酸とキナ酸のエステル」から構成される。代表的な成分は「5-caffeoylquinic acid(5-CQA)」です。
抗酸化作用や糖代謝調節作用が確認されており、ヒト試験でも一定の生理作用が報告されています(引用:Tajik et al., 2017, Molecules)。
冷え性の原因
冷え性は医学的に明確な疾患名ではないが、以下の生理的要因が関与するとされています。
- 末梢血流の低下
- 自律神経機能の乱れ
- 筋肉量の低下による熱産生不足
- 血圧や血管反応性の影響
クロロゲン酸が冷え性に関係すると考えられる理由
1. 末梢血管の機能に関与する可能性
クロロゲン酸は血管内皮機能を改善する可能性が報告されています。例えば、Watanabe et al.(2018, Journal of Nutritional Science and Vitaminology)では、5-CQAが血管内皮細胞においてNO(一酸化窒素)産生を促進する作用が示唆されました。
NOは末梢血管を拡張し、血流を改善する重要な分子であるため、冷え性改善につながる可能性があります。 ただし、ヒトを対象にした「冷え性への直接的効果」を検証した臨床試験は現時点で確認されていません。
2. 糖代謝改善による代謝亢進の可能性
クロロゲン酸は糖吸収を抑制し、インスリン反応を調整する作用が複数の研究で報告されています(引用:van Dijk et al., 2009, American Journal of Clinical Nutrition)。
冷え性は代謝低下を伴うことが多いが、クロロゲン酸の代謝改善作用が間接的に体温維持に寄与する可能性が考えられます。ただし、これも冷え性に特化したエビデンスは現時点で存在しません。
3. 褐色脂肪組織(BAT)活性化の可能性
動物モデルでは、クロロゲン酸が脂肪代謝を促進し、エネルギー消費を増加させる報告があります(引用:Cho et al., 2010, Phytotherapy Research)。
褐色脂肪組織は体温調節に関与するため、この作用がヒトにも当てはまれば冷え性改善に寄与する可能性はありますが、ヒトでの直接的証拠は確認されていません。
現時点での科学的評価
クロロゲン酸は血流改善や代謝調節に関連する可能性が複数の研究で示唆されているものの、「冷え性改善」を対象として臨床的に検証した一次研究は確認できていません。このため、以下のような科学的評価となります。
- 冷え性改善への直接的なエビデンス:現時点で存在しません
- 間接的に寄与する可能性:代謝改善・血管内皮機能改善などから限定的に示唆されます
- 今後の研究の必要性:ヒト臨床試験が必須
クロロゲン酸の摂取源
- コーヒー(最も主要な供給源)
- サツマイモ
- リンゴ
- ナス
- ブルーベリー
摂取量の目安
一般的なドリップコーヒー1杯に含まれるクロロゲン酸量は約70〜350 mgとされます(引用:Clarke & Macrae, Coffee: Chemistry)。
ただし、冷え性改善を目的とした推奨摂取量などは確立されていません。
注意点
- カフェイン感受性が強い人は摂取量に注意が必要(特にコーヒー)
- 胃が弱い人では刺激になる場合があります
- サプリメントは成分含有量が一定でない製品もあり、品質にばらつきがあります
まとめ
クロロゲン酸は血管内皮機能の改善、代謝亢進、脂肪燃焼促進など、冷え性の背景因子に関連する生理作用を示す研究があります。しかし、冷え性そのものを改善する臨床試験は現時点で確認されていません。したがって、「冷え性改善効果がある」と断定できる科学的根拠は不足していますが、間接的に寄与する可能性は限定的に示されています。今後は冷え性の症状改善を目的としたヒト試験が必要です。
参考文献(一次情報源のみ)
Tajik N, Tajik M, Mack I, et al. The potential effects of chlorogenic acid on human health: A review of the literature. Molecules. 2017.
Watanabe M et al. 5-Caffeoylquinic acid stimulates nitric oxide production in vascular endothelial cells. J Nutr Sci Vitaminol, 2018.
van Dijk AE et al. Chlorogenic acid and glucose metabolism in humans. Am J Clin Nutr. 2009.
Cho AS et al. Chlorogenic acid improves metabolic syndrome in a mouse model. Phytother Res. 2010.
Clarke RJ & Macrae R. Coffee: Chemistry. Springer.

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