ショウガは古くから体を温める食品として利用されてきました。ショウガに含まれる代表的な成分「ジンゲロール」「ショウガオール」は、血流や代謝に関わる可能性が研究されており、冷え性との関連も注目されています。しかし、冷え性の改善効果を直接示す臨床試験は現時点で確認されていません。本記事では、ショウガ由来ポリフェノールがどのように体温や血流に働くのか、科学的根拠をもとに詳しく解説します。
ショウガ由来ポリフェノールと冷え性の関係|ショウガオールの温め作用を科学的に解説
ショウガ由来ポリフェノールとは
ショウガに含まれる代表的なポリフェノール(フェノール類)は以下の2つです。
- ジンゲロール(Gingerol)
- ショウガオール(Shogaol)
ジンゲロールは生のショウガに多く含まれ、加熱や乾燥によりショウガオールへ変換されます。 特にショウガオールは体を温める作用が強いとされる成分です。
ショウガ由来成分の基本作用
ショウガの有効成分については、複数の一次情報(査読済み論文)で以下のような作用が報告されています:
- 血流改善作用
- 代謝(エネルギー産生)促進作用
- 抗炎症作用
- 抗酸化作用
これらのうち、冷え性にもっとも関係するのが「血流」と「代謝」に関する作用です。
ショウガと血流の科学的エビデンス
ショウガ由来ポリフェノールの血流への影響は、ヒト・動物モデル双方で研究されています。
● 血流改善作用に関するデータ
Osaka University の研究グループによる2015年のランダム化クロスオーバー試験(n=10)では、ショウガ抽出物を摂取した後、皮膚血流が有意に増加したと報告されています(Kuroiwa et al., Journal of Nutritional Science and Vitaminology, 2015)。
しかし、この研究は対象者数が少なく、また「冷え性を持つ人」を対象としたものではないため、一般化には注意が必要です。
● 血管拡張作用の可能性
ショウガオールには、血管平滑筋に作用して血管を拡張する可能性が動物実験で示されています(Young et al., Phytotherapy Research, 2005)。
ただし、ヒトにおける血圧改善や末梢血管拡張を明確に示した臨床試験は現時点でありません。
ショウガオールと代謝向上の研究
ショウガ由来成分は「熱産生(サーモジェネシス)」に関わる可能性が報告されています。
2012年に Columbia University が実施した研究(n=10 healthy men)では、ショウガ粉末2gを摂取した群でエネルギー消費量が24時間あたり約43kcal増加したとされています(Mansour et al., Metabolism, 2012)。
これは代謝がやや向上したことを示しますが、 冷え性の改善効果を直接証明するデータではありません。
ショウガと体温上昇の研究
ショウガの経口摂取で体温がどの程度変化するかについても、小規模な研究があります。
Journal of Ethnopharmacology(2008)の研究では、ショウガ飲料摂取後に末梢皮膚温が上昇したと報告されていますが、体温の上昇幅は0.2〜0.5℃程度と小さく、継続的な冷え性改善を示すものではありません。
冷え性への効果は「確立していない」
2024年時点で、 ショウガ由来ポリフェノールが冷え性を改善することを直接示した臨床試験は存在しません。
一方で、血流改善・代謝向上などの作用が示されているため、 「冷えの自覚改善に寄与する可能性はあるものの、医学的に確立した効果ではない」 というのが最新の科学的整理になります。
ショウガの摂り方と注意点
- 生より「加熱ショウガ」の方がショウガオールが多い
- 1日の摂取目安量は生換算で10〜20g程度
- 胃腸が弱い人は刺激症状に注意
サプリメントの場合はショウガオール含有量が明確な製品を選ぶことが推奨されます。 ただし、妊娠初期では摂りすぎに注意が必要(WHO)とされています。
冷え性対策として使う際のポイント
ショウガは単体で冷えを「治す」ものではなく、生活習慣改善と併用することで効果が期待されます。
- 運動習慣(筋肉量維持)
- 入浴による深部体温上昇
- 鉄分などの栄養補給
- 規則正しい睡眠
冷え性の原因には、自律神経の乱れ、貧血、甲状腺機能の低下なども含まれるため、強い症状が継続する場合は医療機関での検査が必要です。
まとめ
ショウガ由来ポリフェノール(ジンゲロール・ショウガオール)は、血流改善や代謝向上などの作用が一次研究で報告されています。しかし、2024年時点で「冷え性を改善する」という明確な臨床エビデンスはありません。補助的な温活食材としては有用ですが、生活習慣の改善と併用することが重要です。
参考文献
Kuroiwa A, et al. J Nutr Sci Vitaminol. 2015.
Mansour M, et al. Metabolism. 2012.
Young HY, et al. Phytother Res. 2005.
Jolad SD, et al. Phytochemistry.
WHO – Pregnancy-related herbal product guidance
医学書院『自律神経と体温調節』

健康は資産、幸せは健康から!!


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