前頭側頭型認知症(FTD)とは?症状・原因・治療法をわかりやすく解説【アルツハイマー型との違いも紹介】

健康

「最近、家族の性格が変わった」「以前と比べて感情の起伏が激しくなった」——そんな変化から気づかれることが多いのが、**前頭側頭型認知症(FTD:Frontotemporal Dementia)**です。
アルツハイマー型認知症とは異なり、記憶よりも“人柄や行動の変化”が目立つのが特徴で、若年層にも発症することがあります。
この記事では、FTDの原因や症状、診断・治療法について、専門的な内容をやさしく解説します。

前頭側頭型認知症(FTD)とは?症状・原因・治療法をわかりやすく解説【アルツハイマー型との違いも紹介】

前頭側頭型認知症とは?

前頭側頭型認知症(FTD:Frontotemporal Dementia)は、脳の「前頭葉」と「側頭葉」の神経細胞が変性・脱落していくことで発症する認知症の一種です。 前頭葉は感情のコントロールや判断力、社会性をつかさどり、側頭葉は言語や記憶の一部に関与しています。 この領域の機能が低下すると、性格や行動、言葉の使い方などに特徴的な変化が現れます。

アルツハイマー型認知症との違い

アルツハイマー型認知症では、記憶障害が初期症状として目立ちますが、FTDではむしろ「行動」や「性格」の変化が先に起こります。 また、FTDは比較的若い世代(50~60代)で発症することが多く、「若年性認知症」の代表的なタイプでもあります。

比較項目前頭側頭型認知症(FTD)アルツハイマー型認知症
主な障害部位前頭葉・側頭葉海馬を中心とする大脳皮質
初期症状性格・行動の変化、言語障害記憶障害
発症年齢40〜70歳代(若年に多い)65歳以上に多い
感情のコントロール低下しやすい比較的保たれる(初期)
進行速度比較的ゆっくり緩やか〜中等度

前頭側頭型認知症の主なタイプ

FTDは、症状の現れ方によっていくつかのタイプに分類されます。

  • ① 行動変異型FTD(bvFTD)
    社会的ルールを無視した行動、暴言、浪費、食行動の変化などがみられます。本人に病識(自覚)が乏しいことが特徴です。
  • ② 原発性進行性失語(PPA)
    言葉をうまく使えなくなる、語彙が減る、言葉が出にくくなるなど、言語機能に障害が生じます。発語や理解に関わる側頭葉の障害が主因です。
  • ③ セマンティック型FTD
    言葉の意味がわからなくなる(例:「リンゴ」が果物だとわからない)など、意味理解の低下がみられます。

主な症状

FTDの症状は大きく「行動・性格の変化」と「言語障害」に分けられます。

行動・性格の変化

  • 感情の起伏が激しくなる、怒りっぽくなる
  • 周囲への配慮がなくなる(社会的ルールを無視)
  • 過食や甘いものの異常な摂取
  • 同じ行動を繰り返す
  • 無関心・無気力になる

言語障害

  • 言葉が出にくくなる
  • 単語の意味がわからなくなる
  • 会話のキャッチボールが難しくなる

原因と発症メカニズム

FTDの原因は完全には解明されていませんが、脳内の異常タンパク質(タウ蛋白やTDP-43など)の蓄積が関係していると考えられています。 これらのタンパク質が神経細胞にたまり、細胞死を引き起こすことで脳の萎縮が進行します。 また、約30〜40%の患者には遺伝的要因(特定の遺伝子変異)が関与していることも報告されています。

診断方法

FTDの診断には、以下のような検査が行われます。

  • 神経心理検査:記憶、言語、判断力などを評価。
  • MRI検査:前頭葉・側頭葉の萎縮を確認。
  • 脳血流シンチグラフィ(SPECT):脳の血流低下部位を可視化。
  • 遺伝子検査:家族性の場合に実施されることがあります。

FTDは初期にはうつ病や統合失調症と誤診されることもあり、専門医による慎重な鑑別診断が重要です。

治療法とケア

現時点では、FTDを完治させる治療法は確立されていません。 しかし、症状を和らげ、生活の質を維持するためのアプローチがあります。

  • 薬物療法:衝動性や攻撃性に対して、抗うつ薬(SSRI)や抗精神病薬を使用することがあります。
  • リハビリテーション:言語療法士による言葉の訓練や、作業療法による生活支援が行われます。
  • 家族支援:介護者の負担軽減や理解を深めるカウンセリングも重要です。

また、環境調整(静かな部屋で過ごす、行動を制限しない工夫など)も症状の安定に役立ちます。

家族ができるサポート

FTDでは本人に病識が乏しいため、家族の理解と支援が欠かせません。 感情的に叱責せず、「安全」「安心」を確保しながら、できる範囲で自立を支援することが大切です。 介護疲労を防ぐためには、地域包括支援センターや専門医療機関、認知症カフェなどを活用しましょう。

研究と今後の展望

現在、タウ蛋白やTDP-43を標的とした新しい治療薬の研究が進められています。 早期診断の精度向上や、神経保護作用をもつ薬剤の臨床試験も行われており、将来的には病態進行を抑える治療が実現する可能性があります。

まとめ

前頭側頭型認知症は、記憶障害よりも「性格・行動の変化」が先に現れるタイプの認知症です。
早期に気づき、適切な診断とサポートを受けることで、本人と家族の生活の質を守ることができます。
「性格が変わった」「社会的なルールを守らなくなった」などのサインを見逃さず、早めに専門医を受診しましょう。

参考文献

  1. 日本神経学会(2023)『認知症疾患診療ガイドライン』

  2. Neary, D. et al. (1998). Frontotemporal lobar degeneration: A consensus on clinical diagnostic criteria. Neurology.

  3. Rascovsky, K. et al. (2011). Sensitivity of revised diagnostic criteria for the behavioural variant of frontotemporal dementia. Brain.

  4. 厚生労働省「認知症政策の現状と課題」(2024年版)

健康は資産、幸せは健康から!!

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