熟成ホップ由来苦味酸(MHBAs)と認知機能|記憶・集中力を支えるホップ成分の最新研究

健康

ホップといえばビールの苦味や香りを支える原料として知られていますが、近年その「熟成ホップ由来苦味酸(MHBAs:Matured Hop Bitter Acids)」が、記憶力・集中力などの 認知機能 をサポートする可能性を示す研究が出てきています。成人を対象とした臨床試験では、注意力の改善やメンタル疲労の軽減が報告されており、新しい脳の健康アプローチとして注目されています。この記事では、MHBAsとは何か、どのように脳や神経に働きかけるのか、そして活用のポイントをわかりやすく解説します。

熟成ホップ由来苦味酸(MHBAs)と認知機能|記憶・集中力を支えるホップ成分の最新研究

熟成ホップ由来苦味酸(MHBAs)とは?

ホップ(学名:Humulus lupulus)の花やその抽出物には、α-酸(humulone等)、β-酸(lupulone等)、およびそれらの酸化・熟成によって生成される「熟成ホップ苦味酸(Matured Hop Bitter Acids:MHBAs)」が含まれています。このMHBAsは、ビール醸造過程やホップの貯蔵・熟成過程で生成・抽出され、苦味だけでなく、抗酸化・抗炎症・神経活性といった健康機能に関わる可能性があることが報告されています。

認知機能とは?

認知機能とは「記憶力」「学習力」「注意力」「判断力」「処理速度」など、私たちが日々の生活や仕事・学びの場で必要とする脳の働きを指します。加齢やストレス、睡眠不足、運動不足などによってこの機能が徐々に低下しやすく、認知症リスクとも関連します。

MHBAsが認知機能に働きかけるメカニズム

MHBAsが認知機能に良い影響を与えると考えられる主なメカニズムには、以下が挙げられています:

  • 自律神経(迷走神経)刺激作用:ヒト試験で、MHBAsを摂取すると自律神経活動(心拍変動指標)が改善し、注意力テスト時の脳の活性が上がったという報告があります。
  • 抗炎症/神経保護作用:動物・細胞レベルでは、MHBAsが脳内の炎症マーカーを抑制し、神経突起の減少を防ぐという報告があります。
  • 気分・疲労軽減作用:記憶や集中力の低下には、慢性的な疲労・ストレス・気分不調が影響します。MHBAsは、疲労感や不安の軽減にも効果があるとされ、ひいては認知機能の維持に寄与する可能性があります。

臨床研究による知見

いくつかのヒトを対象とした臨床試験で、熟成ホップ苦味酸の認知機能・メンタル状態への効果が調査されています。主なものを紹介します。

・45〜64歳の認知機能低下を自覚する成人60名を対象に、12週間 MHBAs(35 mg/日) vs プラセボの二重盲検試験が実施され、「言語流暢性」「ストループテスト(注意力)」「疲労・不安」が改善したと報告されています。

・30〜64歳の健康成人34名を対象に、MHBAsの単回摂取が心拍変動(自律神経指標)および注意力検査スコアを改善したとの報告もあります。

これらの結果は、MHBAsが「日常的な記憶力・注意力・認知処理速度の維持」に寄与する素材としての可能性を示しています。ただし、効果の範囲・持続性・最適な摂取量・対象集団の明確化などについては、さらなる研究が必要です。

活用方法と注意点

MHBAsを日常に取り入れる際のポイントと注意点は次の通りです:

  • 摂取量の目安:臨床試験では35 mg/日程度が用いられており、機能性表示食品として同様の含有量を参照している例があります。
  • 継続が鍵:1回の摂取でも注意力改善が認められていますが、記憶力・学習力といった認知機能維持には継続的な摂取が望まれます。
  • ライフスタイルとの併用:認知機能を保つためには、十分な睡眠・バランスのよい食事・適度な運動・ストレス管理などが基本です。MHBAsはあくまで“サポート素材”として位置づけることが適切です。
  • 注意点:ホップ由来成分のため、ホップアレルギーのある方・妊娠・授乳中の方・医薬品を常用している方は摂取前に医師・薬剤師に相談してください。また、効果は個人差があります。

今後の展望と研究課題

熟成ホップ苦味酸は、認知機能・メンタル疲労・注意力という観点で興味深いエビデンスを持ち始めています。しかし、以下のような点が今後の研究課題となっています:

  • 長期的な認知機能維持・認知症予防への効果証明
  • 最適な摂取量・最適な摂取タイミングの明確化
  • 高齢者・認知障害前段階(MCI)・若年層など対象集団の拡大
  • 他の栄養素や生活習慣との相互作用・相乗効果の検討

これらの知見が進むことで、ホップ由来苦味酸が「認知機能を支える食品素材」としてより実用的な位置づけとなる可能性があります。

まとめ

熟成ホップ由来苦味酸(MHBAs)は、ホップの苦味成分をさらに熟成・抽出した成分で、注意力・記憶力・集中力・メンタル疲労の改善に寄与する可能性が臨床・研究で報告されています。とはいえ、これはあくまで「認知機能維持のサポート素材」であり、日常の睡眠・食事・運動・脳トレといった生活習慣と併せて取り入れることが重要です。今後の研究進展とともに、さらに確かな活用が期待されます。

参考文献

  1. Fukuda T., et al. “Effects of Hop Bitter Acids, Bitter Components in Beer, on Cognition in Healthy Adults: A Randomized Controlled Trial.” J Agr Food Chem. 2020;68(1):206-212.

  2. Ayabe T., et al. “Improving Effects of Hop-Derived Bitter Acids in Beer on Microglial Inflammation and Cognitive Impairment.” Front Neurosci. 2020.

  3. Keio University & Kirin Holdings. “Bitter compounds in beer regulate autonomic nerve activity and improve attention.” 2023.

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