出生後休業支援給付金とは? 支給要件・支給額・申請手続きと注意点をFP視点で解説

ファイナンス

2025年4月より、新たに導入される 出生後休業支援給付金 は、出産直後の育児休業取得を後押しし、特に男性の育児参加を促進する狙いがあります。従来の育児休業給付金や出生時育児休業給付金に上乗せして支給され、最大28日分・休業前賃金の13%相当額 が給付されます。

本記事では、2025年改正内容を踏まえた最新の支給要件・給付額計算・申請手続き・注意点を、ファイナンシャルプランナー(FP)の視点も交えてわかりやすく解説します。給付金を最大限に活用して、家計と育児を両立する設計のヒントを一緒に考えていきましょう。

2025年4月施行版|出生後休業支援給付金の制度概要・支給要件・申請手順とFP視点での活用法

 

1. 制度の背景と位置づけ(2025年改正)

日本政府は少子化対策と育児・仕事の両立支援を目的に、2025年4月から新たに出生後休業支援給付金を創設しました。これは、既存の育児休業給付金/出生時育児休業給付金に「上乗せ」する形の給付制度で、育児休業中の所得低下を緩和する役割を果たします。

特に、男性の育児休業取得率が低い現状を改善するため、制度設計には「両親とも育休取得」という条件が盛り込まれています。ただし、配偶者が育休取得できない合理的な事情がある場合には要件緩和の例外規定も設けられています。

2. 支給対象者と要件(2025年版)

以下に、2025年4月から適用される出生後休業支援給付金の主な支給要件を整理します。

2.1 被保険者であること

給付対象となるには、「雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者」であることが前提です。

2.2 被保険者自身の育児休業取得要件(14日以上)

被保険者は、対象期間内に出生時育児休業(産後パパ育休)または育児休業を通算で14日以上取得している必要があります。

2.3 配偶者の育児休業取得要件 or 例外条件

原則として、配偶者も同じ対象期間内に通算14日以上の育児休業を取得していることが要件となります。ただし、配偶者が育児休業を取得できない「合理的な理由」がある場合には、配偶者要件を免除できる例外規定があります。例外となる主なケースには以下が含まれます: – 配偶者が無業者・自営業者・フリーランス – 配偶者が産後休業中 – 配偶者が別居中やDV等で関係断絶状態 – 配偶者が法律上の親子関係を有しない – 配偶者がいない、行方不明、離別・死別している

2.4 対象期間の定義

対象期間は、被保険者が産後休業を取らない場合と取る場合で異なります。産後休業を取らない場合(主に父親など):子の出生日または出産予定日のうち「早い日」から、「遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間が対象。産後休業をとる場合(主に母親):子の出生日または出産予定日の早い日から、「遅い日から起算して16週間を経過する日の翌日」までの期間が対象。また、2025年4月1日時点で既に育児休業を開始していた場合には、対象期間の「起点」を2025年4月1日に読み替える(調整)という特例ルールがあります。

3. 支給額・給付率・上限額(2025年仕様)

給付金の金額は、以下の計算式をもとに算定されます。

支給額 = 休業開始時賃金日額 × 休業日数(上限28日) × 13%

「休業開始時賃金日額」とは、休業開始直前6か月の賃金総額(賞与を除く)を 180 で割った額です。

なお、支給日数は対象期間に取得した育児休業日数が基準であり、そのなかで上限が28日と定められています。

また、休業前賃金日額には上限額(2025年4月1日時点では 15,690円)が設けられています。

この制度は、育児休業給付金/出生時育児休業給付金と併せて給付率が最大80%相当となる設計がとられています(非課税、社会保険料免除を含む)ため、実質的には「休業前賃金の手取り相当(10割相当)」を目指す設計とされています。

:もし月給30万円というモデルケースで28日分を休業した場合、賃金日額=(30万円 ÷ 180)=1,666円相当 × 28 日 × 0.13 = 約 6,066円となります(この例はあくまでイメージ。実際は上限や給付金との組み合わせを考慮します)。

4. 申請手続きの流れ(2025年対応)

出生後休業支援給付金を受けるには、育児休業給付金等との併用申請が基本となります。以下が主な手続きの流れです。

  1. 育児休業(または出生時育児休業)取得の申請を勤務先に提出
  2. 育児休業給付金(または出生時育児休業給付金)の支給申請をハローワークに提出
  3. 同時に、出生後休業支援給付金分を、同一の申請書または兼用形式で申請
  4. 必要書類を添付・提出(賃金証明、育休証明、配偶者の育休取得状況など)
  5. ハローワークで審査 → 支給決定 → 給付開始

申請の期限は、出生時育児休業または育児休業の開始日から起算して4か月が経過する日の属する月の末日までです。

また、もし出生後休業支援給付金の申請を育児休業給付金申請時に同時に行えなかった場合でも、後から単独で申請することも可能ですが、その場合は育児休業給付金が決定した後に申請という扱いになります。

5. 注意点・落とし穴(2025年最新版)

  • 上乗せ給付である点を確認: 本制度は、育児休業給付金や出生時育児休業給付金を前提とした上乗せ給付であり、単独で全額支給される制度ではありません。
  • 配偶者要件の例外該当性を正しく判断: 「育児休業を要件としない場合」に該当するかどうかは、配偶者の雇用形態・就業形態・別居状態などで判断されます。誤った判断は支給不可のリスクを招きます。
  • 支給日数の上限(28日)に注意: 取得育児休業日数が多くても、この制度で給付される日数は28日までという上限があります。
  • 休業前賃金日額の上限規制: 賃金日額には上限(2025年4月時点で15,690円)が設定されており、これを超える給与水準の人はその分給付額が抑えられます。
  • 賃金の支払い状況と給付金の整合性: 休業中に給与が支給されている場合、その額が支給対象分に近いと給付金が減額または不支給となるケースがあります。制度設計上、ある程度の調整がなされているものの、給与変動がある場合は事前に確認が必要です。
  • 事業主・企業側の対応体制未整備リスク: 新制度の導入に伴い、企業の就業規則・労務管理体制が追いついていないケースも考えられます。従業員への制度説明、申請サポート、書類手続きの整理などを怠ると、受給漏れや手続き遅延が生じやすくなります。
  • 申請期限の遵守: 申請が遅れると受給できなくなります。育児休業開始日から4か月が経過する日の属する月の末日までという期限を忘れないようにしましょう。

6. FP視点で考える活用法とライフプラン設計への影響

出生後休業支援給付金を活用する際、FP的には次のような視点を持って設計することが望ましいです。

6.1 家計の短期収支安定化に活用する

出生直後は、育児用品費・医療費・家事代行費など支出が増える時期です。本制度で最大28日分の追加給付を得られることは、短期的なキャッシュフロー補填として有効です。ただし給付期間・日数には上限があるため、それ以降の支出をどうまかなうかも見据えておく必要があります。

6.2 育休取得スケジュールと制度要件の整合性設計

本人・配偶者の育児休業取得日・取得期間のタイミングを制度要件と照合しながら設計することが重要です。特に、取得期間が14日に満たないと要件を満たさないため、プランニング段階で日数配分を意識する必要があります。

6.3 リスク管理・代替戦略との併用設計

本制度だけで育児休業全期間を賄うわけではないため、他の給付制度(育児休業給付金など)や預貯金、短時間勤務制度(育児時短就業給付金)などとの組み合わせ設計が合理的です。制度が限定的な日数・支給率設計であるという前提を常に念頭に置くべきです。

まとめ(2025年版)

  1. 2025年4月から「出生後休業支援給付金」が創設され、育児休業給付金/出生時育児休業給付金に 最大28日間・13%相当額 を上乗せ支給する制度となりました。

  2. 支給要件には、被保険者本人が通算14日以上育休取得、および原則として配偶者も14日以上育休取得という要件がありますが、配偶者が取得困難な一定ケースには例外規定があります。

  3. 給付額は「休業開始時賃金日額 × 日数 × 13%」で計算され、賃金日額には上限(15,690円)が設けられており、支給日数も28日が上限です。

  4. 申請は育児休業給付金申請と併用が基本。申請期限は育休開始から4か月後の月末まで。申請漏れには注意が必要です。

  5. 注意点として、上乗せ給付である点・配偶者要件の例外ルール・上限日数や日額規制・給与支払状況による調整・企業対応体制の遅れなどが挙げられます。

  6. FP視点では、この給付金を短期的な収支安定に活用しつつ、育休取得計画・他給付との併用戦略を意識したライフプラン設計が鍵となります。

制度の運用開始直後は事務手続きや各企業の対応が追いつかないケースも予想されますので、最新の厚生労働省公表資料・ハローワーク案内なども必ず確認しながら進めてください。

参考文献・引用元

  1. 厚生労働省「出生後休業支援給付金を創設します(リーフレット/PDF)」

  2. 厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続(2025年版)」

  3. freee「出生後休業支援給付金とは? 支給要件・給付額・申請方法をわかりやすく解説」

  4. Job Medley「出生後休業支援給付とは?対象者と給付金の計算」

  5. 各解説記事「2025年4月新設 出生後休業支援給付金とは?」(MSL社労士事務所)

  6. 各企業向け解説「出生後休業支援給付金とは? 支給要件・企業側対応」

  7. moneiro「2025年版 出生後休業支援給付金とは?金額・申請」

 

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